<記憶>

 「海に飛び込んで、自殺をした青年です。 ここに、運ばれてきたときは、もう、手遅れの状態でした」
 「よし。 わかった」

 何だ、この気持ちよさは、このまま、ゆっくり、海の底へ沈んで行くのか。
 もう、私の記憶は泡となって消えていく。
 このまま、海の底へ、このまま・・・・・・・
 「これが、この青年の、死ぬ直前の記憶ですか。 実験は成功ですね」

 ―――皆さんは、このようなことが可能だと思いますか―――

 人類は、不可能なことを可能にしてきました。 この様な事も、可能な時代がやってくるのではないでしょうか。
 そうなると、お通夜に、死んだアナタの脳の記憶を記録した媒体を再生して、テレビの画面で、遺族が見ているなどと言う事が、一般化しているかも知れません。
 遠くない、近い将来に。