時刻

 太陽系の惑星などの軌道を計算するには、地球時TTを使用する。

 地球時TTは、以前の名称を地球力学時TDTという。
 地球力学時TDTとは、地球を中心とする天体の運動に適用される時刻をいう。

 日本に住む我々が、通常、知り得る時刻は、協定世界時UTCに基づいた日本中央標準時JSTである。
 日本中央標準時JST協定世界時UTCとの関係は、次の式で表される。

   JSTUTC+9時間

 日本中央標準時JSTとは、東経135度の明石を通る子午線上の時刻をいう。
 この東経135度を時間に変換すると、24×135/360=9となり、協定世界時UTCより9時間進んだ時刻になる。

 協定世界時UTCとは、世界時UT1との時刻差が常に一定の範囲を超えないように閏秒で調整された時刻をいい、国際原子時TAIとの間には整数秒の差がある。
 国際原子時TAIとは、セシウム原子の放射の振動数により1秒の長さが決められている、世界各国の複数の原子時計から合成された時刻をいう。
 世界時UTとは、経度0度のグリニッジを通る子午線上の平均太陽時をいう。
 世界時には三種類あって、天体観測から得られる観測場所での世界時をUT0という。
 地球の地軸の変動によって生じる経度変化を補正した世界時をUT1という。
 さらに、地球の自転速度の変化から生じる季節変化を補正した世界時をUT2という。
 世界時UTという場合は、世界時UT1と考えてよい。
 太陽時には、実際の太陽の動きから得られる真太陽時と、天球上を一定の速度で運動する仮想天体から得られる平均太陽時とがある。

地球時TTと協定世界時UTCとの関係は、次の式で表される。

   TT=UTC+66.184秒 (2009年閏秒挿入時)

 地球時TTと協定世界時UTCとの差である66.184秒は、協定世界時UTC閏秒が挿入されると1秒増加する。
 よって、過去の地球時TTと協定世界時UTCとの差は知ることができるが、将来のある時点における地球時TTと協定世界時UTCとの差は、閏秒がいつ挿入されるか分からないので、知ることができない。

 そこで、協定世界時UTCと世界時UT1との差は、±0.9秒以内に閏秒で調整されているので、協定世界時UTCを世界時UT1と考えて、世界時UTとして使用することにする。
 地球時TTとの間に、いくらかの時刻差はあるが、計算の精度をあまり必要としないのであれば、世界時UTで代用しても、さほど問題はないと思われる。